2025.02.11
やまに農産株式会社 髙橋医久子さん
西和賀町を代表する特産品「西わらび」。その品質を守り安定した生産を続けていくための、大事な仕事があります。それは「優良な株を守ること」であり、そのミッションを担うのが「やまに農産株式会社」です。
同社の代表・髙橋医久子さんは長らく花や野菜苗の育苗や販売に携わってきました。「西わらび生産販売ネットワーク」の初期メンバーとしてわらび栽培に深く関わるなか、西わらびの宣伝マンとして観光わらび園の運営も行っています。そしてもう一つの大事な役割が、西わらびの苗を育て系統管理をすることです。
「どんな芽が良いわらびになるかを見極めて育て、歩留まり率をあげることが重要。何年かの検証期間を経て、現在の太くてとろっとおいしい西わらびを安定生産できるよう株を管理しています。冬は霜が立つと芽が凍ってしまうため、雪の下で0〜1度の安定した状態を保ちます。本当に雪に守られていますね」と医久子さん。
さらに、わらび園を営業するうち、わらびの生育が良いと根も増えるため、限られた土地で栽培する場合に根詰まりを起こすという問題が浮上。同じ場所でわらびを採り続けるためには、その根を取り除く必要がありました。そこで考えたのが、根を廃棄せずに西和賀産わらび粉に生かすことでした。
わらび粉づくりは地道です。秋から冬、畑から掘り起こして洗浄、細かく切ってミキサーで粉砕し、ザルを通してろ過し、何度も精製作業を繰り返さなくてはなりません。沈澱したデンプンを乾燥させ、真っ白で上質な「ハナ」の部分だけを使います。十分に乾燥したら袋詰めしますが、本当の完成は1年後。時間をかけてデンプンを安定させるのです。こうして手作業で丁寧につくりあげたわらび粉は、地元の3菓子店がそれぞれ個性あふれるわらび餅にして販売。遠方から人を呼び込む、町の大切な観光資源になっているのです。
(ユキノチカラ新聞 2024年11月号より)
「希少の極 いわて西和賀産本わらび粉」。
掘り起こした根の量のわずか5%という貴重品です。
理想のわらびの親株を管理する苗床。
太くて柔らかい系統を育てています。
畑から掘り起こし洗浄した「わらびの根」。
このあと精製作業が繰り返され、わらび粉に仕上がります。
「親株を管理し自社加工したものを、地元でお菓子にしてわらび餅にできる地域は全国唯一。自身を持って誇れるものです」。息子の秀さんもUターンし、親子で協力タッグ!